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情などを離れた公約数的・共通的な指標となる意味合いで、運動を理解して頂く手がかりになるのではないでしょうか。
強制力と法の実効性の点につきましては、本法のどのような点について強制力による実効性を求められているのか判然としませんが、端的にいって、献体は、欧米で最後のボランティアと呼ばれるように奉仕の精神の発露としての行為であり、むしろ強制とは全くかかわりのないところにこそ、献体の精神があるわけですから、献体自体について強制力を伴わないのが本来の姿であると考えられます。

 

問2
従来の「死体解剖保存法」との関係について、お教えください。

 

答:
本法と死体解剖保存法との関係については、ひと言でいえば、一般法と特別法の関係にあるものといえます。
一般的にいって、特定の人、事柄、行為又は地域を限って適用される法を特別法といい、それらの制限がなく一般に適用される法を一般法と呼びます。死体の解剖・保存については、死体解剖保存法がこれを一般的(包括的・統一的)に定めていますので一般法の地位にたちます。これに対し、本法は献体に係る解剖について規定するものですから特別法の地位にたつことになります。
一般法と特別法の適用関係については、まず特別法が適用され、特別法に規定されている事柄以外のことについては、一般法の原則が適用されることになります。例えば、本法では遺体に対する礼意の保持については規定を置いておりません。これは、一般法たる死体解剖保存法に既にこの旨の規定が置かれいることによりますが、この場合には一般法の原則に立返って、死体解剖保存法第二十条(死体の解剖を行い、又はその全部若しくは、一部を保存する者は、死後の取扱に当っては、特に礼意を失わないように注意しなければならない。)が適用されることになります。

 

問3
本法第四条についてですが、この規定が置かれたことにより、献体登録の際の「家族の同意」が不要になったのだ、との声を聞きますが本当でしょうか。

 

答:
まず条文の内容を正確に読み取って頂くことが大切だと思いますが、本法では遺族の承諾については、ごく基本的には次のような考え方をとっています。死体解剖保存法は解剖が適法に行われる要件の一つとして遺族の承諾を受けることを求めていますが、本法では、本人が書面により献体の意志を表示していて、次の二つの場合のいずれかにあたるときにはこの承諾を受けることを要しないものとの特例を定めています。一つは、遺族が承諾を拒まないときで、いま一つは遺族のいないときです。
ご質問にあるような考え方は、この二つの場合のうちの前者に関連して生じたものと思われます。条文的には、遺族の承諾と拒絶の間に「拒まない」領域を認め、この領域については承諾と同じに取り扱うこととしていますので、その限りにおいて本人の意志の実現の可能性を拡げておりますが、このことから献体が本人の意志のみで行えることとなったというものではありません。遺族の方が明白に拒絶された場合には解剖を行うことはできず、結果として献体の意志の実現の途が閉ざされることになります。そうならないためには、やはり家族の方の理解が不可欠なものであることが理解頂けましよう。
お尋ねにある「献体登録の際の家族の同意」は、本法にいう「遺族の承諾」とは時間的に異なるものであり、また、法律的にも「遺族の承諾」にかわるものではありませんがご家族の理解を得るということを考えて頂くのならば、登録にあたりましても同意を得ておくことが必要なのではないでしょうか。
本人の献体の意志の尊重と家族の方の感情の調和をどこに求めるかということが献体法の最大の眼目となるわけで、本法は現時点では最大限本人の意志を尊重したものとなっているものと考えますが、献体の意志が実現されるためには、ご家族の理解があることが前提となるわけでありますから、従来にもましてご家族の理解

 

 

 

 

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